2006/12/16

谷川岳(天神尾根)

メンバー:会員5(男性4、女性1)


熊穴沢の小屋 あつい!!
今シーズン初雪山は快晴 ほんとにあつい。
肩の小屋付近の標識
山頂は目の前 トマの耳
オキの耳
肩の小屋 なぜか久しぶりの雪にはしゃぐ面々。
さくさく歩きやすいかも。 でも、はまる私
やっぱりはしゃいでる面々。

……あるとざんしゃがものがたる
 
  12月の日曜 谷川ロープウェイときたら大したもんだ。2005年に掛け直されて、休憩所も立派になって、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやっている。
  休憩所で寝ていると、何十人の登山者・ボーダーどもが、真夜中に次々やってきて、小山のような荷物を下ろし片っぱしから雑魚寝して行く。夜中の三時に来る奴もいて、なかなかどうして眠れやしない。
  
  予定は西黒尾根だったのだが、何せ例年と、比べて雪がすくないから、天神尾根に替えたのだ。始発のロープウェイに乗り込むが、すっかり雪が見当たらない。そしてじっさい天神平スキー場まで、何とか雪山が楽しめるほど、積雪あるのを祈るのだ。
  とにかく、そうして、のんのんのんのんやって来た。
  そしたらそこはどういうわけか、その、積雪なんとか30cm。30cmだぜ、最高でだぜ。どういうルートで行くかって?そいつは夏道ルートから、たぶんぶらっと歩いていけば、夏より早く行けるだろう。
  そいつが熊穴沢の小屋まで、ゆっくり歩いて小一時間、登山者どもはぎょっとした。なぜぎょっとした?よくきくねえ、暑いに決まっているじゃないか。雲ひとつ無くすっきり青空無風なんだから、どいつもみな、いっしょうけんめい、上着を脱いで、じぶんの汗を拭いていた。
  ところがそのとき登山者は、、ピッケル・ストック持ちながら、ちらっと鋭く山頂を見た。それからすばやく足早に、何でもないというふうで、いまま以上のスピードで、登って行ったりするもんだ。
  するとこんどの稜線は、傾斜が急にあがるのだ。登山者どもはぎょっとした。それでも鎖も岩も雪に埋まり、かえって歩き易い、さくさくさくさく登っていった。
  そしたらとうとう、トマの耳まであっさり上って来やがった。
  そしてメンバー全員で、標識のとこで、呑気に写真を撮りはじめたのだ。
  ところが何せ、リーダーともう一人は、前回ひどい状況で、この山頂に立ったので、オキに耳には行かないのだ。
  残りはいかにもこの天気がもったいないらしく、小さなその眼を細めていたが、またよく見ると、たしかに少しわらっていた。残り三人のメンバーはやっと覚悟をきめて、右側の雪尻に気を付けながら、オキの耳に到達し、谷川岳最高地点からの360度の景色を堪能した。トマの耳まで戻ってきた時、とてもきれいな、鶯みたいないい声で、こんな文句を云ったのだ。「ああ、だめだ。肩の小屋までさっさと戻ると、休まず歩き出すのに決まってる。」
  まあ、リーダーはそのつもりに決まってる。ザックを尻に敷いて、度胸を据えて斯う云った。「どうだい、ここで休んでいきゃあ、腹ごなしでもしようじゃないか。」「面白いねえ。」三人はがからだを斜めにして、眼を細くして返事した。しばらく休んで、肩まで戻る。「結構遅かったな。待ちくたびれたぞ。」リーダーはそういって、さっさと歩みだす。ところが三人はけろりとして「やっぱりいった。」と答えたもんだ。
  どうだ、そうして帰り道は、来た時以上に快適で、雪の上をふかふかと、滑るように降りていく。いままで見えた山頂も、あっという間に見えなくなり、出発地点のスキー場が、目の前に迫ってくる。これならオキの耳に寄らなけりゃ、午前中に終わっていたぜ。
       (宮沢賢治の“オツベルと象”風に書いてみました)記:I