14日は天候が悪く、一日停滞した。今日も天候は決してよくない。一般コースの北穂南稜はゴルジュの
辺りから濃いガスがかかり、上部はまったく見えない。しかし二日間も停滞してテントでゴロゴロしているの
はよくないので、雨が降り出したら涸沢にもどるつもりで北穂東稜行きを決定する。ロープ2本と少量の
ガチャを持って、午前6時前にテン場を出発した。
南稜を登り、1時間と少しでゴルジュを抜けカールに達する。ここで一般ルートとお別れし、ゴロゴロした
カールを右にトラバースして東稜の稜線をめざした。途中2箇所ほど小さなケルンが積んであるので、
なんとなくルートが判別できた。とにかくガスが濃いので、20mより前方がはっきり見えない。すぐに、
傾斜のやや強い雪渓に出くわした。アルムの往年の名クライマー3名は、底の固い山靴を履いている。
彼らはキックステップをきかせながら、ルンルンと雪渓を越えて対岸へと行ってしまった。それに対し、
われわれ若手クライマー5名(30代1名、40代1名、50代2名、60代1名)は、ファイブ・テンのペラペラ
のアプローチシューズである。ツルツル滑っておっかなくって、とても雪渓を渡れない。念のため、ロープを
出して雪渓をトラバースした。じっちゃん達3名は、それを見て楽しそうに笑っていた。
雪渓を渡り終え、グズグズガラガラのルンゼのきわを慎重に登って東稜の稜線をめざした。途中でガスが
切れ、景色が見えるようになってきた。下の雪渓を見たら、なんのことはない。すぐ下のほうで雪が終わって、
ガラガラのモレーンがこちらに続いている。あれを渡れば、ロープを出す必要などなかった。とにかく、視界
が悪いと要らぬ苦労ばかりが多くなる。
9時30分頃、東稜の稜線に着く。はっきりしたトレースがあるよい道だ。それに、一般ルートよりもよほど
花が多くて綺麗でもある。やたらと植物に詳しいK会長に、片っ端から花の名前を聞きながら、稜線歩きを
みんなで楽しんだ。
30分ほど歩いてゴジラの背に達する。ここでロープを出し、40mほどの固定ロープを張った。ヌンチャク
だの、マッシャーだの、プルージックだのを思い思いにかけ、慎重にゴジラの背をわたる。停滞で弛緩した
身体に、高度感から来る緊張が快い。
さらに10mほどの懸垂下降をこなして、ゴジラの背の通過を終了する。アルパインルート初参加のAさん
には、U代表が細かいロープ操作を伝授しながらロアーダウンで降りていただいた。
小一時間ほどのザクザク道の登りで北穂小屋へ、そして北穂高岳の山頂へと達した。ちょうどお昼時、
小屋は食事をする人たちで満杯だった。われわれも頂上で記念撮影をし、行動食を食べながらまったりした。
南稜の下降は、バラバラの競争状態だ。ガスが切れ、前方の北尾根まで展望が広がったので、みんなで
景色を楽しみ、会話を弾ませながら一気に涸沢に下る。午後2時過ぎにテン場にもどり、そのまま涸沢ヒュッテ
に直行して生ビールを堪能した。
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